花粉症のお話

抗アレルギーの目薬はもうさし始めましたか?

日常の診療の中で患者さんとお話していると、花粉症の目薬は、「目がかゆくなってから」さし始めればいいとお考えの方が多いようにお見受けいたしますが、それは間違いです。

花粉症などのアレルギー性結膜炎をお持ちの方は、かゆみボタンが瞼(まぶた)の表面に沢山あるとお考え下さい。アレルギーが酷い人ほど、このかゆみボタンの数が多いのです。

小さなお子さんがボタンを見つけるとそれが何のボタンであろうとも嬉々として押して回るように、花粉やホコリなどアレルギーの原因となる物質はルンルンしながら瞼のかゆみボタンを押して回ります。かゆみボタンが押されると、かゆみ成分が流れ出てくるので、瞼に炎症がおこり、かゆくなったり、ひどいと痛くなったりするのです。

さて、アレルギー性結膜炎の目薬は大きく分けると2種類に分けられます。ひとつはアレルギーの原因物質がボタンを押せないようにボタンカバーをかけて回るお仕事をする抗アレルギー薬です。なかなかの働き者でせっせとかゆみボタンに蓋をかぶせてくれるので、ボタンの数がそれほど多くない(アレルギーがそれほど強くない)人やピンポンダッシュをする花粉の量が少ない時期はそれだけでかゆみボタンが押されず、かゆみ成分が放出されないのでかゆくならずにいられます。

では、この抗アレルギー薬を使わないでいたらどうなるでしょう?花粉にピンポンダッシュされ放題になってかゆみ成分がじゃんじゃん流れ出る結果、ウッキー!!!と目をこすりたくなるほど瞼がかゆくなってしまうのです。

そこでジャジャーン!と登場するのが抗炎症薬の目薬です。抗炎症薬の目薬は、ちょっぴりひ弱な非ステロイド系点眼薬とムキムキマッチョなステロイド点眼薬に分かれます。これら抗炎症薬は流れ出たかゆみ成分によって起こってしまう瞼の炎症反応を抑えてまわる仕事をします。かゆみ成分が噴火した熱々のマグマのようなものだと思ってください。マグマの通った後は火事になるのでそこの火消しをして回るのが抗炎症薬たちのお仕事です。

少しひ弱な非ステロイド系はバケツをもって水をかけて回る程度しかできませんが、ムキムキマッチョなステロイドはタンクローリーに水を沢山積んで大量の水をぶちまけて回ります。どちらが火消しに強いかは一目瞭然ですね。そうです、ムキムキマッチョなステロイドの圧勝です。

ただし、ムキムキマッチョなステロイド点眼薬にはひとつ大きな問題があります。ステロイド点眼薬を使うことで眼圧が上がってしまう事があるのです。眼圧は目玉の硬さを表す数値ですが、これが高くなりすぎると目玉の情報を脳に届ける視神経が傷んでしまってどんどん見えなくなってしまいます。しかも眼圧がとんでもなく高くなっていても多くの場合は症状が何もでてくれません。ステロイド点眼薬の水まきで火消しが進んで、ひゃっほー!気持ちいい!!と思っていたらいつの間にか目が見えなくなっていることがあるのです。

このようにステロイド点眼薬は使わずに済むなら使わないに越したことはなく、使う必要がある場合もその頻度は最低限にしたいところなのです。でもボタンの数が多すぎる(アレルギーが強い)目や、押し寄せてくる花粉の量が多すぎたりすると抗アレルギー薬を使っていても人手不足に陥ってしまい、ボタンカバーが間に合わなくなってしまうので、かゆみボタンを押される頻度が高くなり、抗アレルギー薬を点眼していてもかゆみ成分の放出を完全に抑え込むことができなくなります。このような時はステロイド点眼薬に頼るしかなくなりますが、その場合も定期的に眼圧の数値を確認して、眼圧が上がってしまったら一時的であっても眼圧を下げる目薬も一緒に使っていくことが重要となります。

そんなわけで、花粉症をお持ちのみなさま!
症状がほとんどなく、花粉がまだ殆ど飛んでいない1月末~2月初めころには抗アレルギーの点眼薬をさし始め、少しでもステロイド点眼薬に頼らなくてよいようにしていきましょう!