翼状片(よくじょうへん)とは
翼状片は角膜と強膜(白目)の境に翼状片細胞と呼ばれる異常細胞ができて、強膜を覆うための組織であるはずの結膜が角膜内に侵入してしまった状態です。発生頻度は10%から多い地域では30%の人にみられると言われる比較的多い病気ですが、とくに翼状片になりやすい人の特徴として、紫外線を多く浴びるお仕事や趣味をお持ちの方があげられています。一部の方は翼状片ができやすい遺伝的素因をお持ちの方もいるとされていますが、遺伝形式はまだよくわかっていません。
翼状片は角膜の中心に達してしまうと光の通り道が遮られて大幅な視力低下を生じますが、そこまで進行していなくても、角膜表面に張り付いた翼状片が縮んだりして角膜を引っ張ることで眼鏡でも矯正できない程の極めて強い乱視を作って視力低下の原因となります。
また翼状片同様に紫外線が病気の発生に大きく関与している眼表面扁平上皮癌(OSSN)の癌細胞が翼状片組織内に紛れている場合があると言われています。海外の紫外線が強い地域では、OSSNが紛れていた確率は10%もあったという研究がありますが、紫外線が強くない地域では0-2%と頻度はそれほど高くはありませんでした。このため紫外線が強い地域にお住いの方で、紫外線を多く浴びるお仕事等をされている方は扁平上皮癌が紛れている可能性を念頭においておく必要があります。
翼状片の治療:翼状片の治療法は手術のみ
翼状片手術では、角膜に侵入した翼状片組織を物理的に角膜から剥がして切除します。翼状片は角膜に侵入した三角形の頂点を頭、角膜と強膜(白目)の境目部分を首、三角形の底辺に近い強膜上の部分を体と3つの部位に分類されます。翼状片細胞が多いのは頭から首にかけてですが、体の部分にも異常組織が含まれるので、手術では角膜上にある頭から首にかけた部分だけでなく、角膜に近い強膜(白目)上の体部分も一部結膜を切除します。
次に、眼球の他の部分から健康な結膜を採取して翼状片切除後に露わになった強膜を覆うように健常な結膜を縫い付けます。透明角膜の上の翼状片を剥いだ部分と健常結膜を採取してきた部分には何も被せません。角膜は透明な角膜上皮が増えて傷を覆ってくれるようになるのを待ちます。
初回翼状片手術の合併症はそれほど心配なものはありません。怖いことが起きるとしたら手術中翼状片を角膜からはがしている最中に急に眼球やお顔が動いて角膜に強い力がかかって角膜が裂けてしまうこと位ですが、通常このようなことは起こりません。また理論的には、術後の創部に細菌感染を起こして角膜潰瘍ができる可能性もありますが、これも術後に処方される抗生剤の点眼薬をしっかり使っていただければ通常は防げます。
翼状片手術の最も大きな問題点は再発率が非常に高いことです。術後半年の時点ですでに再発している可能性は3-17%とされています。そして一度再発した翼状片は初回と比べてその術後再発率は非常に高くなります。このため翼状片の再手術を行う場合は、マイトマイシンCなどの抗がん剤を使用しながら手術を行うなどの必要性がでてきます。
翼状片手術後の状態
結膜を縫い付けた糸によるちくちく感や結膜を採取した場所、翼状片を剥離した角膜の異物感や痛みが出やすいため、手術終了時に医療用コンタクトレンズを入れて手術を終了します。コンタクトレンズは診察時に医師が外しますが、コンタクトレンズが入っていても多少の異物感は1-2週間は続くことが多いです。